総需要(AD)・総供給(AS)分析の核心

総需要(AD)・総供給(AS)分析の核心は、「経済全体の生産水準(実質GDP)と物価水準が、需要サイドと供給サイドの相互作用によってどのように決定されるか」を体系的に説明する点にあります。もう少し噛み砕いていえば、以下のような視点が重要です。

  1. 総需要(AD)の役割
    • 消費、投資、政府支出、純輸出など、経済全体における「需要の合計」を示す。
    • 金融政策(利子率や貨幣供給)や財政政策(政府支出や増減税)が変化すると、総需要曲線が右や左にシフトし、産出量と物価水準に影響を与える。
  2. 総供給(AS)の役割
    • 企業・労働者・資本など、生産にかかわる要素の合計としての「供給能力」と生産コストを示す。
    • 短期と長期で考え方が異なり、短期の総供給曲線は生産要素価格やメニューコストなどの「粘着性」によって上向きに傾き、長期の総供給曲線は潜在GDP水準(経済のフル稼働水準)で垂直になるという特徴がある。
  3. ADとASの交点が「均衡」を決める
    • 総需要曲線と総供給曲線の交点が、短期的・長期的な均衡の産出量(実質GDP)と物価水準を決定する。
    • 需要ショック(消費や投資、政府支出の変化など)や供給ショック(石油価格の急騰や自然災害など)が起きると、これらの曲線がシフトし、均衡点が変化する。その結果として、景気変動やインフレーション・デフレーションが生じる。
  4. 政策含意
    • AD/AS分析は、財政政策・金融政策などの政府・中央銀行の政策によって「どのように経済活動や物価が変動するか」を理解するうえで中心的なフレームワークとなる。
    • 需要面の刺激(財政政策による需要拡大など)は短期的には実質GDPや雇用を増やす効果がある一方、物価上昇につながる可能性がある。
    • 供給面に働きかける政策(技術革新支援や生産性向上策など)は、長期的に経済の生産能力を高め、持続的な成長と物価安定の両立に寄与する。

要するに、「総需要」と「総供給」が相互に影響し合いながら、経済の総体的な産出量と物価水準を決定するという構造を可視化し、政策や外部ショックが与える影響を分析するのがAD/AS分析の核心です。

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