実物的景気循環(Real Business Cycle, RBC)理論の核心は、「景気の変動はおもに技術進歩などの“実物的(供給サイドの)ショック”によって引き起こされ、それに対して家計や企業が合理的に最適行動をとる結果として生じる」という考え方です。以下、そのポイントをまとめます。
- 技術ショックが主な原因
RBC 理論では、景気の拡大・後退をもたらす要因の中心は金融政策や貨幣要因ではなく、生産性や技術の変化などの「実物的ショック」であると考えます。たとえば、ある産業で革新的技術が発明され全体の生産性が上昇すれば景気は拡大するし、逆に生産性を下げるような要因(大規模自然災害など)が起これば景気は後退する、というイメージです。 - 完全競争・価格柔軟性の仮定
RBC 理論では、賃金や価格は比較的早く変化し、市場は常に均衡に向かうと想定します。よって、非自発的失業のような供給不足(あるいは需要不足)で労働市場が恒常的に不均衡に陥ることは想定しません。 - 合理的期待・最適化行動
家計や企業は将来を見据えて合理的に行動し、消費・貯蓄・労働供給・投資を最適化しようとする、と仮定します。したがって、経済主体の行動は、あくまでも実物的ショックに応じた最適応答としての景気変動をもたらす、と解釈されます。 - 拡張された新古典派成長モデル
RBC のモデルはソロー型やラムゼー型といった新古典派の経済成長モデルをベースに、技術ショックや不確実性(確率的要素)を組み込む形で構築されています。このため「動学的確率的一般均衡(DSGE)モデル」の先駆けと見なされることも多いです。 - 経済政策の有効性への示唆
RBC 理論では、価格や賃金が柔軟に調整され、家計・企業が合理的に行動しているので、金融政策や財政政策による需要刺激策は持続的な実質効果をあまり持たない、と考えられます。技術や生産性の向上のほうが景気変動に与えるインパクトは大きいとされます。
要するに、実物的景気循環理論における「核心」とは、「技術進歩等の実物的ショックによって、家計・企業が最適化行動をとる結果として景気変動が生じる」という点にあります。この視点は、貨幣的要因や価格の硬直性を重視するケインジアン的な説明とは大きく異なり、“景気はあくまで実物要因による効率的な反応の産物”だとみなすのが特徴です。